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2007.11.03 Sat
「まひるの月を追いかけて」という本を読みました。
恩田陸さんの本はこれで5冊目くらいで今まで当たりとはずれが半々でしたが、この本ははずれでした。そしていろいろこの作品について否定的なことをいっぱい書いてるので、この本が好きな方は回れ右です。
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さて、あらすじとしては
「失踪した一人の男を捜して、奈良を旅する二人の女。それぞれの過去と現在を手探りしながら続く、奇妙な旅の行き着く先は?奈良を舞台に夢と現実が交錯する旅物語。」
って感じで(by Amazon)、歩きながら自分や周りの人間関係を見つめなおしていく、っていう点ではこの作者の私的あたり作「夜のピクニック」に通じる所がありそうなお話なのですが、 この話は面白くなかったです。
私がこの話に入り込めなかった理由としては、
第一に奈良の名所を巡って行く中で、その地名と情景から歴史までがやたら詳しくしつこく描写される
わけですが、
「その場所を見たことがないので情景が浮かばない」という点。
『寺』とか『古墳』というキーワードで自分の知識の中のそれに置き換えて想像はしますが、実際の地名が挙げられている時点で私の想像は100%違う舞台なわけで、物語の舞台のイメージが湧かないというのは致命的です。私が無知なだけですが…。
そして第二に私が好きじゃない情景描写と心象風景の描写を多用していること。
物語の進行に必要な情報だけくれればいいのに、やたら鮮明な作者のイメージを読者に強要する文章は疲れるので好きじゃありません。
さっさとメインストーリーを進めろよ!!と思ってしまいます。
あと自分の心情をどんよりした空に重ねてみたりと言った、「心情を何かに例える」描写が私は嫌いです。
心情なんてストーリーの流れで感じさせてくれればいいもので、事細かに何かに例えてまでこっちに説明してくれなくても…。と思ってしまします。
しかもこの話の人物はなんの前触れもなくカミングアウトしたり、自己分析を始めて冷静に自分の心情をみんなに公表したりと、ストーリーの流れもくそもなくいきなり心情を語りだすので訳が分かりません。
この本の登場人物と似たような考え方を持った人が読めば面白いのかもしれません。
そして第三にメインストーリーの薄っぺらさ。
この話の成分は
1. 奈良観光…50%
2. 失踪した男の元恋人の死の謎…10%
3. 失踪した男の謎…5%
4. 登場人物の鬱…35%
で出来ています。な感じです。
本来なら
1. 奈良観光…5%
2. 失踪した男の元恋人の死の謎…45%
3. 失踪した男の謎…35%
4. 登場人物の過去…15%
になるべきというか、読者の興味は「失踪した男の元恋人の死の謎」だと思うし、実際それで話を引っ張ってたと思うのですが、最初の成分表が示す通り、なんだか重要な謎をにおわすだけにおわしておいて、物語における実容量はほぼ皆無の上、謎もくそもなにも解明しないまま、終わってしまったお話でした。
失踪した男もすぐ出てきたし、失踪した動機だけはずいぶん引っ張りましたが、たいした理由に感じなかったし、本当にこの話を語る上で重要な部分を抜き出したら5ページくらいで終わったんじゃないの?と思えるようなお話でした。
第四に奈良観光のしつこさ
全てのつまらなかった理由に通じるものなのですが、
1. 知識のない読者をおいてきぼりにしてやたら鮮明に奈良の名所を描写するわりに
2. ストーリー進行上意味があると思えない
この奈良旅行が私にとって全ての元凶です。意味は10%くらいあるかもしれませんが、本の内容の半分近く使う意味は全くなかった思います。
実在の場所を舞台にしたお話でも、『ダ・ヴィンチ・コード』の作者の『天使と悪魔』は面白かったです。
この物語に出てきた名所には「イルミナティ」という過去に存在した秘密結社の手がかりが隠されているというストーリーで、謎解き要素が楽しく、実際の風景が分からなくても100%楽しめるお話でした。
名所の外観も必要最低限の情報で想像させてくれましたし、実際バチカンに行って「天使と悪魔ツアー」でもしたくなっちゃうような本でした。
しかしこの「まひるの月を追いかけて」は…。これを読んで奈良に行きたくなる人はいないだろとうと思えます。
ただ『「奈良を旅行する話」もしくは「奈良を舞台にした話」を書きたい』から始まって、軽くネタバレ入りますが、
『奈良』→『寺』→『坊主』→『○○』の連想ゲームで適当に話作っただけなんじゃ…と思わざるを得ないお話でした。
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