楳図作品はホラーの印象が強くて怖い…と言う人もいるかもしれませんが、この
漫画に関して言えばホラーというよりサバイバル物語ですので、怖くはないと思います。
絵の好みはどうしようもありませんが…。
さて、読んだことのない方でも「ある日突然、学校ごとどこかへ移動してしまい、そこでサバイバルする話」程度には知っているかと思います。
もう少し詳しく説明すると、主人公・高松翔(小6)は、彼は朝お母さんとケンカをして家を出ます。
そして、その後起こった地震とともに、翔は学校ごと未来の地球、文明は滅び、大地は砂漠と化した、水も草木もなにもない地球へと漂流教室してしまうのです。
そこで翔達大和小学校の生徒を待ち受ける様々な問題…。
それに懸命に立ち向かう小学生達の姿はもうすごいです。絶望の中で、希望を生み出そうと必死になる姿に感動です。
「まず、ぼくたちは生き抜くということに目的がある!!
たとえ……
もうだめだということが、わかったようなときにも、
一瞬の可能性でも作り出すんだっ!!この手で!!」(中略)
「だからあらゆる方法で生きのびる手を作らなければ
だめだと思うんだっ!!
つくるという部分をしっかり考えてほしいんだ!!」この小学校全体が組織的にまとまりながら、一致団結して生き抜こうと試行錯誤、努力していく様がすごいです。
総理大臣とか厚生大臣なんていう役職まで決めたり、また上級生は下級生をしっかりフォローします。
この学校という組織が、一つの理想の社会の縮図となっている気がします。
今の世の中、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」みたいな精神は全くないと思います。いじめやら学級崩壊だの言われてる時代に下級生の面倒までしっかり見る上級生なんかいやしません。
なんだか、人として当たり前の姿に感動させられます。
当たり前の事が当たり前にできなくなっている世の中なので、こういう
漫画を全国の小中学校生に読んでいただきたいです。
ちゃちな夏休みの感想文の指定図書よりも絶対、学ぶところが多いと思います。
この
漫画の大きなテーマは「環境問題」そして、前述した通り、団結し、時にはケンカしながら何も無い砂漠を生き抜こうとする小学生達の姿に感動を覚えるのですが、
他にも母と子の「親子愛」にも感動します。
学校を出る前にケンカ別れしたお母さんと翔は、時を越えて会話をする事ができるようになります。ここで、お母さんが何度も翔達のピンチを救うのです。ここには「親が、子供のために、子供の未来のために何ができるか」 と言ったテーマがあるような気がします。
今、本当に環境問題が深刻になってきていて、石油とかの有限の燃料が切れた時、どうなるのかとか、身近なところで年金問題とか、何十年後のかの子供達の未来はかなりヤバイ事になってるんじゃないか?と思う事が多々あります。
この
漫画で言えば、我が子のいる未来はなにもない砂漠の地球。
そんな未来にしてしまった現代にいる人たち。
その現代で、最悪の未来を変えるためにできることはなんだろう。
そういうことを考えさせてくれます。
だからこの
漫画は、実はこれからの未来を担う子供にも見て欲しいし、今の世を作っている大人、特に政治家の人々には見ていただきたい。
この「漂流教室」という
漫画はストーリーの面白さに加え、前述したような深いテーマがものすごく浮き彫りになって、最後にガツーン!!とぶつかってくるので本当に感動します。
読み返す2回目はさらに深く味わう事ができると思います。 2回目は1回目と言葉の重みが全然違いますよ。
妹は疲れるからもう読まない、と言ってましたが…。でも文庫の1巻から6巻までノンストップで読みつづけてました。「どーなるの?ちゃんと帰れるの?」って。
是非、若い子供世代に読んで欲しいです。
これを大勢の子供が読んでくれれば日本は変わる気がします。そんな漫画でした。