聖女の救済
読者の視点では、犯人は分かっているが、そのトリックをどうやったのか、って所でミステリーなお話でした。こういう視点は「容疑者X」と同じですね。
トリック自体はなんとなくこうじゃないかなぁと察しがつきましたが、そこから浮かび上がる犯人の心情とか心理に深いものを感じました。
「容疑者X」の頃から感じていましたが、最近の東野さんの話作りは人物の心情に焦点を当ててきている気がします。
昔は一分の隙もなくパズルのようにピッタリはまって明らかになっていく謎の全貌!みたいなストーリー構成の巧さと気持ちよさが私の中ではメインだったのです。
私的には昔の感じの方が好きなのですが、それでもやっぱり面白です。
ガリレオの苦悩
短編集なので、電車で読むのに丁度良かったです。
もしまたドラマやるなら使えそうなお話がいっぱい!って感じでした。
特に一番最後の湯川先生への挑戦状!みたいな話は面白かったです。
膨らませられればこれも映画にできそうな設定だなぁと思いました。
湯川先生に敵対心を抱く科学者が警察に犯行予告と湯川先生へ挑戦状を送って、その通りに交通事故や転落事故など、一見事故としか思えない殺人を起こしていくお話です。
あと、湯川先生の恩師が出てくる話も面白かったです。
これはトリックもガリレオ的というか、科学的でありながら、最も人情味に溢れた殺人者だったんじゃないかと思います。
殺人の動機も世相を反映しているというか、他人事じゃないなと思える分、余計に感情移入できました。
そういえば、「聖女の救済」の方でトリックに浄水器とかミネラルウォーターが絡んでくるのですが、東野さんはいつの間にか日本人の生活の一部になっているもの、誰の身近にもあるようなものを使って話を作るのが上手いなぁと思いました。
暗夜行とか百夜行でも思いましたが、いつの間にか当たり前になってたけど、その時代を代表する何かを盛り込んで話の中の時代を感じさせるのが上手いと思います。
そしてその何かはリアルタイムで私達の周りにあったものなので、まるであの時代に本当にどこかでこういう人生を送った人たちがいたんじゃないかというような気になって余計に物語に引き込まれます。